コバエのダンス
3階の会議室で順番にプレゼンが行われていた。
私は自分の番が回って来る前に行けば良いと思って遅れて行った。
しかし会議室に着いてから発表の仕方が予想外の切り口であったため、手持ちの資料ではうまく説明できないと感じて狼狽し始めた。
だが、狼狽するのと同時に、どうやって喋りでカバーしようかと考える楽しさもあった。
次、私の番!
家族に叩き起こされた。
洗濯機を回し、前日深夜に胃が痛くなり過食したのを思い出しながら、朝食も食べずに二度寝してしまった。
とても怠惰だ。
昼頃に目が覚めて洗濯物を干す。
コロッケパンとコーヒーを食べる。
それでも足りずに冷凍ご飯を解凍し適当に腹を満たす。
一人の時はちゃんと料理しない事が多い。
部屋が汚い。
少し片付ける。
残りわずかになった電子タバコを吸いながら、ベランダに向かって煙を吐く。
よく言えば、落ち着いている。
悪く言えば、無気力だ。
せっかくの良い天気だったが外には出ず、家でゆっくり過ごした。
何か諦めがついた様な心境だったけれど、それはどこか拗らせていた見栄の様なものが消えたからかもしれない。
毎日の心境を観察していると振り返りの役に立つ。
最低限やらなくちゃいけない仕事の連絡と書類作成をして、16時過ぎに家を出た。
私はいつも郵送する時はポストに入れず、郵便局で出している。
100円玉と封筒とイヤフォンとスマートフォンだけを持って行った。
手紙を出した後、占い師に前言われた「土に触れるのが良い」という言葉を思い出して公園に行った。
ベンチに座る。ラジオから流れるテクノ。
ふと上を見上げると、目線の少し先にコバエが飛び交っていた。
テクノの音楽に合わせて、コバエがダンスしている様に見えた。
それはリズムがあって無機的な動きはVJのエフェクトの様に見えた。
普通なら近くでハエが飛び交っていたら不快に思って移動するならするかもしれないけど、私はなんとなくそれをずっと見続けたかった。